中学二年ぐらいのとき、真夜中に電話が鳴った。

当時、祖母は別に住んでいて、
家族はみんな寝ていたけど、たまたま私が起きていて電話を取った。

祖母からだった。

「おじいさんがおれへんねん」

そう言われて、私はびっくりした。
おじいさんは、もう10年以上前に亡くなっていたから。

「おじいさん、もう亡くなってるで」

そう言うと、祖母は少し間をおいて

「そうやったかいな」

と、あっさり返してきた。

これが、私がはじめて
認知症の人と関わった記憶。

そのあと、祖母の介護が始まった。

母と一緒に、在宅で、
半分通いながらの介護生活。

正直、振り回された。

なんでこんなことになるんやろ、
なんでこんな目に遭うんやろ、って思うことも何回もあった。

それから30年くらいたって、
今度は母が認知症になった。

今度は、私ひとりでの介護。

しんどいことには変わりないけど、
そのとき、ふっと思い出した。

「ああ、おばあちゃんもおんなじこと言ってたなぁ」

そして、

「あのときはこんな風にして機嫌を損ねてしまったけど、
ちょっと変えてみたらうまくいくかもしれへん」

そう思ってやり方を変えてみたら、
うまくいくことがけっこうあった。

あのときは、ただ振り回されていただけやと思ってたけど、
ちゃんと自分の中に残っていたんやなと思った。

おばあちゃんのときの経験は、
無駄ではなかったんやと思う。

64年生きてきて、
認知症の人と関わってきた時間を数えてみたら、
たぶん30年近くになると思う。

なんでそんなことしてんねん、って
自分でも思うし、振り回されてばっかりやった気もする。

でも、振り返ってみたら、
それでも良かったんかな、と思うことがある。

こうしたらいい、とか、
そういう話じゃなくて、
ただ私はこうやった、というだけの話です。

でも、もしかしたら
今しんどい人も、あとから振り返ったときに

「あれも無駄じゃなかった」

そう思える日が来るかもしれへん。

#介護 #在宅介護 #認知症

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